ソフト連覇!工藤監督16年かけ恩返し

 「ソフトバンク5-3西武」(17日、ヤフオクドーム)

 ソフトバンクが17日、2年連続リーグ制覇を果たした。本拠地で西武を下し、就任1年目の工藤公康監督(52)が宙に舞った。1964年の南海(現ソフトバンク)と95年のオリックスの9月19日を抜き、リーグ史上最速Vを達成。南海時代の10度、ダイエー時代の3度と合わせて17度目のリーグ制覇で、1リーグ時代を含めると19度目の優勝。CSはファイナルSから出場し、2年連続7度目の日本一を目指す。

 大きく両手を広げ、9度宙を舞った。初采配から127試合目。工藤監督が、歴史的な独走劇で頂点に立った。「福岡を出て、いつか少しでも恩返しをしたいという気持ちで監督を引き受けさせていただきました。それがない、こんな幸せな人間はいません」。愛する本拠地のファンの前で笑みがはじけた。

 昨年10月。秋山前監督の電撃辞任に伴い、球団に就任を要請された。野球キャスターとして活躍し、春に筑波大大学院に入学したばかり。5人の子供たちへの負担も考えた。「普通に考えれば断っていた」という状況で、王球団会長の存在が考え方を一変させた。「やってくれないか」。電話で告げられ、すぐに東京まで足を運んでくれた。

 「即決だった」

 1999年。当時監督だった王会長の下でエースとしてダイエー初Vに貢献した。その年のオフ。球団フロントとの摩擦で、福岡を去った。「監督としてはお前に残ってほしい。でもお前の野球人生だ」。チームを強くすることに全身全霊をかけながらも、一選手の人生を最優先してくれた王会長の言葉が、心の中に残っていた。

 ユニホームに袖を通した以上、現役時代同様、自分にも周囲にも妥協を許さなかった。キャンプ後、休んだのは3日だけ。プロ級の腕前を誇るゴルフも封印した。内臓への負担を減らすため、球場には毎日ドクダミ茶などを注いだ水筒を持参。試合前のランニングによる発汗を考え、自宅を出る前にマグネシウム入りの風呂につかるのも日課だった。時には2、3軍にも足を運び汗だくになって若手を指導。コーチ経験はない。「打者のことがまだ分かんねえんだよな…」。自宅で試合の映像を見ながら、ソファで眠ってしまう日も少なくなかった。

 すでに優勝マジックが20を切っていた8月末。本拠地の監督室に怒声が響いた。椅子を蹴り上げ、試合で弱気な投球を見せた若手投手を怒鳴り散らした。「野球をなめてんじゃねぇのかっ!そんな甘い世界じゃない」。ベンチで選手の活躍をこぼれんばかりの笑みで見つめる姿とは、正反対の指揮官がいた。

 「10人が入れば10人がやめなきゃいけない世界」で29年間も現役を続けた。毎年、野球をやめた後輩から届く年賀状に心を痛めた。「みんな同じように書いてあるんだ。『あの時言われた意味が分かりました』って。200人は見た。同じ釜の飯を食うことになったわけじゃん。やり切ったと全員が思えるようにどんなことでも言ってやろうって」。嫌われ役になることもいとわない。選手のことを第一に考えてくれた16年前の王会長の姿が、根底にある。

 自軍の強さの理由を「主力があれだけ練習するんだから」と言う。20年前、常勝西武からダイエーに移籍した時、負け犬根性がはびこっていたチームを、嫌われ役になって改革した。「みんな負けても飲みに行くことばっかり話していた。ロッカーで全部の椅子を蹴り倒してやった」と振り返る。

 そのチームは今、常に優勝を争うチームへと変貌した。王会長、秋山前監督から引き継がれたバトン。2人の大打者にはなかった投手の目線も生かしながら、歴史的な圧勝を成し遂げた。「来年の準備はもう6、7月から始めてるよ」。いたずらっぽい笑みに“超”常勝時代突入の予感がにじんだ。

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