新井、誓った 恩師・山本一義さんに捧ぐ、追悼の日本一!

 広島・新井貴浩内野手(39)が3日、尿管がんのため9月17日に死去していたことが明らかになった元打撃コーチでOBの山本一義氏(享年78)の訃報に接し、改めて32年ぶり日本一への思いを強めた。4番としての態度を諭してくれた偉大な先輩。先人の思いを背負って頂点をつかむ。

 言葉が続かなかった。突然の悲報。新井は「本当に…。本当?」と繰り返した。長くカープの4番打者として、低迷期を支えた山本氏の訃報。優勝に配慮する形で発表を遅らせた故人の遺志と知り、現4番打者は言葉をなくした。互いに広島出身。時に優しく、厳しかった。

 「悲しい…しかないです。昔から気に掛けて、かわいがってもらったのでね。厳しく叱ってもらったこともある。残念でならない」

 新井は1999年に入団。山本氏は前年限りで打撃コーチを退いていた。接点はOB、評論家としてだったが、同郷で「本当に目を掛けてもらいました」と言う。よく食事にも誘われ、打撃理論を中心に数多くの助言を受けた。強烈な印象として残るのは、怒鳴られた記憶だった。

 03年7月10日の阪神戦(広島)。4番として出場を続けていたが、不振でたまったフラストレーションが一気に爆発。観客の心ないヤジに生涯初めて応戦した。次戦の12日・中日戦(広島)から4番を外され、6番に降格。山本氏はプロとしての心構えを説き、ファンに対する態度を叱った。

 「若いころ、4番を打たせてもらった時に、思うようにいかなくてね。スタンドのヤジに応戦した姿を見られていた。お前はそういうことをしたらダメだ、と。周りで子供たちが見ているんだ、と叱ってもらったことが記憶に残っています」

 技術以上に、プロとしての姿を大事にした。「人を愛し、自分を愛し、その仕事を愛そう」-。山本氏が大切にしていた言葉だった。プロ野球選手として18年。新井はファンを愛し、愛される選手になった。「体調を心配していたんですけど、回復されたと聞いた矢先だったので。ショックです」。言葉が詰まった。

 この日はマツダスタジアムで全体練習。ロングティーなどで汗を流した。12日からCSファイナルSを戦う。「引退していく人や、OBの方々の思いを背負う」と決意していた短期決戦。恩師の悲報に弔いの思いを強くする。32年ぶりの日本一へ意地でも勝ち抜く。

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