米司法省は８日、ドジャースの大谷翔平選手（２９）の元通訳、水原一平被告（３９）が大谷の口座から約１７００万ドル（約２６億４４００万円）を盗んだとする銀行詐欺などの罪を認め、司法取引に応じたと発表した。連邦地検は刑の軽減を申し入れる。水原容疑者は１４日に罪状認否のためカリフォルニア州の連邦地裁に出廷する。大谷はマーリンズ戦に「２番・指名打者」で出場し、４打数無安打だった。

　連邦地検によると、水原被告は銀行詐欺に加えて、新たに訴追された虚偽の納税申告容疑を認め、司法取引に応じた。すべての犯罪に対する合計の最高刑は禁錮３３年だが、米メディアは法律専門記者の見方として、司法取引によって禁錮７～９年ほどに減刑される可能性があると伝えた。

　司法取引の条件として、大谷に被害額全額の約１７００万ドルを返済することや、追徴課税約１１５万ドル（約１億７９００万円）を支払うことを求められた。また公開された資料には、服役後の国外退去は避けられないことを水原被告も理解していると記されている。

　水原被告は２０２１年９月から違法ブックメーカーで賭けを始め、借金が膨らむと、大谷の銀行口座からの不正送金を画策した。開設を手伝った大谷の口座のパスワードを思い出し、ログインに成功。大谷を装って銀行に電話し、登録されていた電話番号などを変更し不正送金を可能にした。大谷本人と偽って銀行に電話したのは、２５回ほどに上ったという。

　連邦地検は、大谷選手は送金を知らず、許可もしていないとして被害者だと強調している。

　公開された資料で、新たな事実も判明した。

　水原被告は２３年９月、歯の治療費として６万ドル（約９３０万円）が必要になり、支払いに同意した大谷から小切手を受け取った。だが、実際は大谷の口座に紐付いたデビットカードで支払い、６万ドルは自身の口座に入金し着服したという。野球カードの購入費約３２万ドル（約４９８０万円）も大谷の口座から支払ったとしている。

　連邦地検は、水原被告が２２年の課税所得を約１３万ドル（約２０２０万円）と税務当局に報告し、大谷の口座から得た４１０万ドル（約６億３８００万円）が未申告だったとして、新たに虚偽の納税申告容疑で訴追したことを明らかにした。

　◆米国の司法取引　事件の被告らが自身に対する罪状を認めることについて、検察側と結ぶ合意。刑事事件の約９割で司法取引が行われているとされる。被告側は刑の軽減を期待できる一方、検察側にも審理での負担を減らすことで時間や労力を節約できるといった利点がある。司法取引の条件に、関連する事件の捜査に対する協力が盛り込まれるケースもある。司法省は、罪を犯したと判断する明確な証拠がある場合に司法取引を提案できるとしている。