江夏豊氏「サチは宝物」 チームメートとなって『唯一無二の大親友』に

 プロ野球広島で活躍し、2215試合連続出場で「鉄人」と呼ばれた衣笠祥雄氏が23日、上行結腸がんのため亡くなった。71歳だった。 衣笠氏と“水魚の交わり”だった野球評論家・江夏豊氏(69)は24日午後、ヤクルト-阪神戦のテレビ解説を務める予定だった松山で「(衣笠氏は)本当に俺の宝物。次の世界でまた一緒に野球談議でもするよ」と語り、大親友を偲(しの)んだ。同氏は試合中止が決まるや帰京、弔問へ駆けつけた。

 江夏氏にとっての衣笠氏は『唯一無二の大親友』だった。阪神時代はよきライバルとしてしのぎを削り、広島でチームメートとなってからはまさに“腹心の友”として公私にわたって深い付き合いをした。1歳年上ながら「サチ」と呼び、衣笠氏も親しみを込めて「ユタカ」と呼んだ間柄だけに、その表情は沈痛そのものだった。

 「順番だから仕方ない。そうとしか言えない。思い出?一口にはなかなか言いづらいけど、言えることは“いいヤツを友人に持った”ということ。本当に俺の宝物だよ」

 この日の朝、衣笠夫人から自宅に電話が入った。それは決して受け取りたくない悲しみの連絡だった。ヤクルト-阪神戦のテレビ解説のため、準備を整えている矢先の一報。「3日に1回はしゃべってた。10日前くらいから腹水がたまって苦しいなと…」。そして、衣笠氏の人生最後となる野球解説(19日)の翌日、電話で「大丈夫か?養生しろよ」と話をしたのが今生の別れとなった。

 両氏の間で有名なのは1979年11月4日、近鉄との日本シリーズ第7戦。守護神だった江夏氏の“次”を用意するベンチに激怒する姿を見て、一塁手だった衣笠氏が「俺もお前と同じ気持ちだ」と声をかけた。この前を含めると、40年以上に及ぶ長い付き合いになる。同じ時代を同じ野球観で生きた男二人は、いつも本音で語り合った。

 「基本に忠実。ぶきっちょな男だから。少なくとも鉄人だから俺より強い。弱みとかを見せる男じゃない。常にフルスイング。たとえ背中が骨折していても、ヒビが入っていても3つ振って帰ってくる男。あの姿がアイツの野球人生を物語っているよね」

 遠征先では必ず同部屋で、誰よりも互いを理解していた。広島での休日には2人で川に釣りに行くこともしばしば。「あの頃のカープは個性派が多かったから。そういう意味では結構やりやすかったよ」。まさに“水魚の交わり”だった。

 「どっちみちワシもすぐ追っかけるんだから。次の世界でまた一緒に野球談議でもするよ。それが楽しみ」。吹っ切ったように話した江夏氏は、阪神戦が中止になるととんぼ返りで東京へ。サチ、ありがとう。ゆっくり休んでくれ-。弔問に向かう間、しばし氏との良き思い出に浸った。

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