ギリギリ9人の吉川、初戦敗退も完全燃焼 エース負傷&死球も味方が2ランのドラマ

痛めた右足でホームを踏みしめる吉川・南(撮影・道辻歩
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 「高校野球兵庫大会・1回戦、鳴尾9ー2吉川」(7日、ベイコム球場)

 吉川が「9人野球」で完全燃焼だ。西島良彦監督(28)は「選手がよくやってくれました」と振り返る。6月に入ってバスケ部から1人、野球経験のある「帰宅部」から1人の計2人の助っ人を入れ、ジャスト9人で新チーム初の単独チームでの公式戦。敗れたものの、最後の夏にかけた思いが漫画のようなシーンも巻き起こした。

 思わぬアクシデントは二回の守備だった。1死からエースで主将の南颯馬投手(3年)の右ふくらはぎに打球が直撃。南はその場でうずくまると、自分の足で歩くことができず、仲間に背中でおぶってもらいながらベンチに下がった。

 控えがいないため、出場不可能となれば「没収試合」で敗退となる状況。それも分かっていたため「筋肉に当たったのでいけます」と出場への思いを西島監督にぶつけた。ただ、痛みで投げ続けるのは困難だったため、一塁を守ることを選択。代わって、投手経験のある一塁の大垣崇内野手(2年)がマウンドへ上がったが、その後ランニング本塁打を許すなど3点を失った。

 初回の2失点に続き、一気に5点差に広げられてエースも負傷…。最悪な流れの中での二回の攻撃だった。先頭から足を引きずりながら打席に入った南が、痛めている右足元に死球を受けて出塁。続く打席には、1年から共にプレーしてきた熊谷都汰内野手(3年)。その2球目では捕手がボールを後ろにそらしたものの、南は「全力で走れなかったので」と負傷の影響で二塁に進めなかった。高校通算0本塁打だった熊谷は覚悟を決めた。

 「南が足を痛めて走れないので、ゆっくり歩いてかえしてあげようと思った」

 強い気持ちを乗せて4球目を狙い打つと、打球は快音を残し、高々と舞い上がって左翼席に飛び込む2ランに。この状況で高校第1号が生まれる劇的な展開に、ナインは大盛り上がり。南はゆっくりとホームに戻り「(熊谷とは)一緒にずっとがんばってきて、その努力も分かるのですごくうれしかった」と笑顔で熊谷を迎えた。

 その後徐々に痛みが治まった南は、七回1死三塁の状況で再びマウンドに上がりピンチを無失点に抑えた。八回は3点を奪われてコールド負けを喫したが、連合チームではなく「吉川」として戦えたことに喜びがあった。

 「負けたことは悔しいですけど、助っ人の2人も2年生も全力でプレーしてくれて心に残りました。(今後も)どこかで何かしらの形で野球はやりたい」と南。初戦敗退でも、誇らしく思える戦いだった。

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