現役ドラフトに期待「先入観」「チーム事情」で埋もれる逸材にチャンスを/内田順三

 プロ野球界では出場機会の少ない選手を対象にした「現役ドラフト」の導入が検討されている。大リーグでは「ルール5ドラフト」として定着し、移籍によって成功した選手も少なくない。日本球界では継続して議論が行われているが、ファームでの指導歴が長かった内田順三氏に同制度への期待、ファームでの注目選手などについて聞いた。

 ◇ ◇

 非常にいい制度だと思うよね。メジャーでもやっているけど、チームが変わって選手が生き返るケースはあるから。

 日本ハムへ移籍して成功した大田もそうだったけど、選手の使い方というのは大事。巨人から近鉄に移籍して活躍した吉岡なんかもいい例で、梨田(当時の近鉄監督)はその能力を評価して『10試合、目をつぶってやるから結果を出せ』とハッパをかけたらしい。これなら選手からすれば、1試合ダメでも『次、また次』となるよね。精神的に余裕があれば、数字が伸びてくるケースもある。

 力を発揮できない要因はさまざまだけど、ひとつの球団にいると先入観念を持たれている選手がいる。少し使われてダメだと、すぐに「やっぱりあいつは…」となってしまう。自分がカープで指導した選手では10年目に首位打者を取った嶋がそうだった。腰が悪いという先入観念を持たれ、長続きしない。9年目のオフには戦力外も検討されていたけど、自分がコーチに戻って「まだ勝負できる」と球団に残すよう頼んだ。

 素材は素晴らしいと思う選手はファームにたくさんいる。例えばDeNAの関根は14年のフレッシュオールスターで見た時、素晴らしい選手だと思った。足も速く、ミート力もあって、西武からレッズに移籍した秋山のようになれると。当時、西武の山川やロッテの井上も一緒のチームにいたけど、関根はその中でもものすごく目立っていた。

 巨人では捕手の岸田。入団3年目になるけど、広角に打てるようになって打力が上がっている。1軍には炭谷、小林、大城といるけど、岸田も力は付けてきている。外野では松原もポカが多いけど、あの足は魅力。一芸がある選手は、チームによってはまる可能性を秘めている。

 球団それぞれの方針もあるからね。ロッテ・安田のように、1軍で出られる成績も残しているけど、下でじっくり育てている。カープのように5年後を考えて選手を獲得している球団もある。坂倉なんかもいい振りをしているよ。そうなると、対象選手について、入団後の年数や時期をどうするかが難しいだろう。

 出身高校や大学、社会人チームとの信頼関係もあるからね。選手を生かすためのシステムにできるか。クビになりそうな人材が動くのではなく、相手側から評価されていくケースが増えれば日本球界の活性化につながるんじゃないか。

 ◆内田 順三(うちだ・じゅんぞう)1947年9月10日生まれ、72歳。静岡県出身。現役時代は左投げ左打ちの外野手。東海第一から駒大を経て、69年度ドラフト8位でアトムズ(現ヤクルト)入団。75年日本ハム移籍。77年ヤクルト移籍後、82年限りで現役引退。通算成績は950試合485安打25本塁打182打点、打率・252。83年以降は2019年まで広島、巨人で1軍打撃コーチ、2軍打撃コーチ、2軍監督などを歴任した。20年からはJR東日本の外部コーチを務める。

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