【プロ野球黄金伝説】小山正明氏 阪神&自身初優勝と同時達成 金字塔シーズン13完封

 プロ野球を彩った幾多の名勝負、名場面。人は心を躍らせ、目を輝かせた。レジェンドOBが名を連ねるデイリースポーツ評論家陣が現役時代の思い出を語る「プロ野球黄金伝説 令和に語り継ぐ名勝負」。記念すべき1回目は歴代3位の通算320勝を誇る小山正明氏(85)が、自身初優勝を飾った1962年の最終戦を振り返る。

  ◇  ◇

 【1962年10月3日 阪神最終戦・広島戦】

 シーズン最終戦を翌日に控えた1962年10月2日の夜。「いつもは緊張しない」タイプの小山氏だが、「その日は胸の高鳴りを感じた。プロ10年目で初めて優勝が決まる試合に先発するんやからな。いつもと一緒のようには寝られたけど、頭も体も意識しとったんやろな」と述懐する。

 2位・大洋と2ゲーム差。広島との対決に勝てば優勝。だが逆に負けて、大洋が残り3試合に全勝すれば同率決勝という状況。チームは15年ぶり、2リーグ分立後初優勝を懸けていた。

 一回表のマウンド。「球場の雰囲気、歓声がいつもと違って、その光景を見て、緊張したよ」。本拠地が醸し出す、いつもとは異なる空気感に身震いした。硬さからか、初回は中堅方向に捉えられた打球を飛ばされたが無安打無失点。二回に自身の先制適時打などで3点を先制すると、精密機械がいつも通りの狂いない仕事をこなしていく。

 五回2死から古葉に初安打を許したが、危なげなく後続を断った。六回にさらに3点の援護を得た。「(監督の)藤本さんがベンチで安心しきった顔をしてたのを覚えてるよ」。ただ、小山氏は一切、気を緩めなかった。

 「巨人軍の選手が肩で風を切っていた時代。こっちは入団から一度も優勝できなくて、ホンマ憎らしかった。大洋と優勝を争っていたんやけど、巨人を倒したいという一心でやっていた。そんなシーズンだったよ」

 8回まで3安打無失点。スコアは6-0。15年ぶりの優勝は、もう手の届く位置にあった。九回2死。日系アメリカ人で、フィーバーの愛称で親しまれた平山を右打席に迎えた。2ストライクと追い込み、捕手・谷川がお決まりのコースにミットを構えた。「外角低め。投手の基本。バチッと投げ込んだよ。でも、審判の手が挙がったのが見えなくて」。谷川が右手を差し出しながらマウンドに歩み寄る。見逃し三振。絵になる終わり方で、小山氏は胴上げ投手になった。

 あれから58年。今も色あせない記録がさんぜんと輝く。小山氏が最終戦で挙げた27勝目は、2リーグ分立後のセ・リーグ記録となるシーズン13完封の金字塔。

 「記録が懸かった登板だったってのは知らなかった。もし知ってたら、どんな結果になってたやろか。とにかく、優勝したい。それだけやったからね。今も記録が破られてないのは自分でも誇りに思うし、今振り返っても最高のシーズンだったと思う」

 現役21年目の73年にユニホームを脱ぐまで、856試合に登板して歴代3位の320勝。歓喜の瞬間から半世紀以上を経ても、当時の記憶は、目、鼻、耳で感じた色、匂い、音と共に体内に息づいている。

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