巨人が変わった(1)若手育成の成功と「飼い殺し」からの脱却 内田順三氏の視点

 巨人が首位を快走している。際立つのは若手の台頭で厚みを増した選手層。主砲の岡本に続けと戸郷、吉川尚、北村、増田大らが次々と活躍している。

 一方で有望株の高田を楽天に放出するなど、大胆な補強も目立つ。背景にあるのは、“飼い殺し”からの脱却。昨季まで巨人コーチを務めていた内田順三氏(デイリースポーツウェブ評論家)の視点も織り交ぜ、チームの変化に迫っていく。

 ◇ ◇

 7月14日、巨人と楽天との間でトレードが発表された。大塚副代表は高田の放出について、「結構、悩んだんですよ」と本音を明かした。

 新型コロナウイルスの影響で過密日程になることを考え、リリーフの層を厚くしようと実績がある高梨の獲得を目指した巨人に対し、楽天が交換要員として高田の名前を挙げたという。巨人は両チームの先発事情を比較したうえで、高田の将来も考えて楽天に送り出した。

 昨年は同じように、主軸候補として期待されていた和田恋(当時6年目)を楽天にトレードした。「昔ジャイアンツはトレードに出して活躍されると困るという話になって、どっちかというと飼い殺しをしていたんですよ。原監督と私は生かす道があるなら探した方が良いんじゃないかと」(大塚副代表)。こうした考えが、出血覚悟のトレードも積極的に行う理由だった。

 巨人や広島で、長くファームの指導にあたってきた内田氏もこれらのトレードを支持する。「巨人は勝つための補強をしたということだが、高田や和田のことを考えてもいいトレードだと思う。高田は18年にファームのタイトルを総なめにした選手。和田は、岡本と並んで次世代の中心選手としてみられていた選手だった。ただ、少し壁に当たり始めていたところはあった。ひとつ、ふたつの失敗が重なると、指導者にも先入観を持って見られてしまう面があるが、新天地にいけばそうしたものはなくなる。さび付いてからでは遅い。環境を変えることは選手にとっていいことだし、性格やチームカラーが合えば一気に力を発揮する場合も出てくる」

 球団内の姿勢は、長い時間をかけて変化を遂げてきた。15年にGMとなった堤氏がソフトバンクに倣って3軍制を導入し、「育成の巨人」への動きを加速。当時、巨人コーチだった内田氏は「16年は高橋由伸新監督の最初ということで1軍をサポートしたが、堤さんからは『育成を頼みたい』と言われていた。『次世代の選手、自前の選手を作りたいんです』と話していた」。一方で、堤氏も伸び悩んでいた大田や出場機会が減少していた矢野を日本ハムにトレードするなど、選手思いの一面があった。

 “飼い殺し”から脱却し、若手の才能をつぶさない-。徐々に浸透していったカラーは、現場の指導方法にも変化を与えていた。(2へ続く)

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