香川・加藤、人の心を動かす全力疾走でNPBへ駆け上がる

 【香川・加藤次郎内野手】文=高田博史

 徳島との前期9回戦(5月27日、志度)に勝利し、前期優勝へのマジックを「4」にしたあとで、加藤次郎が教えてくれた。「この4連戦(5月25~28日)迎える前に僕、ひそかに目標立ててたんですよ。全試合マルチ(複数安打)を打つ!いま、上出来です!」

 翌日も2安打を放ち、5試合連続複数安打を記録する。自分に課した課題を見事クリアし、前期優勝に大きく貢献した。あの好調を振り返って言う。

 「3割に乗せるには、それぐらい打たなあかんなと思ったんですよ。こっそりですよ。明言してない。連戦やから、目標も立てやすかったし」4月の終わりに・224だった打率を一気に・302まで上げ、リーグ5位の成績で前期を終えている。

 今年1月、広島のトレーニングクラブで新井、丸、堂林(広島)らと一緒にトレーニングを行った。やるべきことはすべてやって、悔いを残したくない。そんな思いで4年目のシーズンに臨んでいる。

 日本ハム、ロッテの2軍と対戦した首都圏遠征でも攻守に躍動している。3試合すべてで安打を放ち、守備でも三塁線の難しい打球をアウトにしてみせた。

 プレー以外の面で、意識して続けていることがある。攻守交代時の全力疾走だ。OBの生山裕人(元ロッテ)の話がヒントになった。

 「『スカウトの心も、ファンの心も動かす。そういうヤツがNPBに行けるんや!』。それを聞いて、僕もやるしかないなと思って」

 ポジションのサードへは、必ず全力疾走で向かう。

 公式戦でうれしいサプライズがあった。試合後のお見送りの際、ある少年野球チームに所属するシュンスケ君から手紙をもらった。

 「読んだら『スイングが速くてカッコいい』とか『守備がうまい』とか書いてて。その中に『全力疾走がカッコいい』って書いてくれてたんですよ。うれしかったですね、それは。生山さんにも見せたんですよ。そしたら喜んでくれて」

 全力プレーは、きっと誰かの心に届く。手紙はいつも、バッグのポケットのなかに忍ばせてある。

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