バリウム検査は検診に有効か 「異常なし」がそうでないケースも 病変発見で内視鏡との差は歴然 医師が語る

 会社、学校などで健康診断が行われる時期です。私が学生の時に大学講師のおじいちゃん先生が、「これからは検診(健診)を受けないと保険を使って医療ができなくなるんと違うかな?」とお話されていたのを思い出します。幸いにして、日本はそこまで厳しくなっていませんが、これからの高齢化社会で、医療費削減のために、このような体制になってくる可能性があるかもしれません。

 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの成人病、胃癌、大腸癌などは症状がほとんどありません。症状がでたときには、病気が大変な事になっていることが多く、経済的、肉体的、精神的に多大な負担がかかります。

 ですから、定期的に検診を受けるということは、リスクの軽減には非常に役立っています。しかしながら、私はそれらの中で、あまりバリウムを飲む検査(胃透視検査)は推奨しません。一番の理由は見落としが多く、精密検査が難しいからです。内視鏡検査では、数ミリの早期癌を見つけることが可能ですが、バリウム検査では不可能です。特に食道の病変はほとんど見つけることができないと言ってもいいでしょう。

 ほとんどが流れ作業で短時間で検査をするために、胃の粘膜全体にバリウムを付着させて精密検査をすることはかなりの技術を要します。検診のバリウムで「異常なし」と言われた人が、胃が痛いので検査をして欲しいと来院され、内視鏡をしたところ大きな潰瘍があることは、それほど珍しくはないことです。

 その他、ヘリコバクターピロリ菌の診断もできません。ポリープなのか気泡なのか判別できないケースもあります。また、大腸に憩室といって窪んでいる病変をお持ちの方がバリウムを飲んで、その憩室にバリウムが詰まり、炎症を起こして穴が開くことがあります。放置すると死に至るので、最悪の場合は緊急手術をしないと救命できません。

 これだけのリスクがあるのにも関わらず、病変を拾い上げる率が内視鏡に比べて格段に劣ります。さらには、放射線も体に受けます。もちろん、バリウム検査それ自体の利点はたくさんありますが、少なくとも検診(健診)においてバリウムを選択することは、それらを承知の上で判断なさった方がいいと、私は思います。

◆谷光利昭 兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。外科医時代を経て、06年に同医院開院。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。

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