「広島１０－３阪神」（６日、マツダスタジアム）

　強い気持ちを込めた白球が、バックスクリーンに消えた。阪神・福留は表情一つ変えず、淡々とベースを一周する。だが、チームとして唯一の見せ場に、敵地スタンドに集まったファンは沸いた。節目の日本通算１０００打点。史上４６人目、４１歳１１カ月での達成は谷繁（中日）に次ぐ年長記録だ。

　「それ（歓声）は本当にありがたいですね。１人でできることじゃない。そういう中での積み重ねなので。周りの方に感謝したい」

　記録は八回に生まれた。点差は８点。大敗ムードの中でも応援を背に、プロとして無駄にする打席はない。広島・中田に対してファウルで粘ると１－２から８球目。真ん中のカットボールに合わせた。今季１号ソロでの達成。「そこは別にどうでもいい、というと変だけど」とサラリ振り返った。

　日米通算２１年目。Ｃマークは糸原に譲ったが、チームのことを第一に考える。「いつも通り、普段のお前でやれば大丈夫だから」。プロ３年目の新主将には、優しく背中を押した。近本、木浪らルーキーを食事に誘い、キャンプでは打撃投手も務めた。「何かあればいつでも聞きにこい」と伝えてある。だからこそ試合後、大敗に語気を強めて言った。

　「もっと早くチームを勢い付ける場面で打てたらよかった。選手たちはきょうの負けを引きずらず、切り替えてやっていかないといけない。毎日、その繰り返しだから」

　一夜明けるとまた、０－０から試合が始まる。だからこそ劣勢の終盤、福留が見せた意地に、浜中打撃コーチも感謝の言葉だ。「明日につながる１本になった。先頭になっていって、本当にありがたいです」。開幕から８試合、まだ“休養日”はない。欠かせぬ５番打者。チーム最年長のベテランが、バットで苦境を切り開いていく。