代打・木浪が立役者 25イニングぶり得点&逆転の怒濤6連打で鬼門突破
「中日3-6阪神」(14日、ナゴヤドーム)
怒濤の6連打で鬼門ナゴヤドームを突破した。阪神逆転劇の立役者となったのは、2軍生活を経て、たくましくなった木浪聖也内野手(25)だ。3点を追う五回に2死無走者から代打で登場し、右前打で出塁。一挙5得点の口火を切り、チーム25イニングぶりの得点となるホームも踏んだ。六回の第2打席では右越え3号ソロで竜にトドメを刺した。虎の頼れるルーキーは近本だけではない!
大歓声が“おかえり”の空気に変わる。原点に立ち返った11日間の夜を越えて-。木浪が帰ってきた。無数のフラッシュに照らされると、はにかみながら笑う。「これから全部勝ちます」。虎党と笑顔で約束を交わした。
「ヒットの方がうれしかったです…でも、やっぱりどっちもうれしかったですね」
逆転の起点となった右前打、そしてダメ押し弾。どちらも大事そうに思い返す。まずは3点を追う五回だった。「代打・木浪」がコールされると、打席で静かに息を吐く。充満する劣勢ムード。だが、その空気を切り裂くかのように7月6日・広島戦以来の安打を右前へはじき返した。
ベンチスタートだった木浪の意地に導かれるように、2死から鮮やかな6連打。25イニングぶりに得点を奪うと一挙5得点で逆転に成功した。反撃の起点を作ると、今度は六回。「完璧でした」と甘く入ったスライダーを捉えた。5月15日・巨人戦以来、91日ぶりの一発は試合を決定付ける3号ソロ。ナゴヤドームでの連敗も5で止めた。灼熱(しゃくねつ)の鳴尾浜で汗を流した時間は、木浪を裏切らなかった。
「やらなきゃダメでしょう。2軍で満足していたらダメですもん。ただ、1軍でやらせてもらった時間があるから、そう思えるのかもしれないですね」
忘れることのできない日になった。厳しさを痛感した7月26日。監督室に呼ばれると、2軍降格を通達された。「レベルアップしてこい」。指揮官からの短い言葉に現実を知った。「打てなかったら、1軍にいられないんだなぁ…」。悔しさは、言葉に重なった。
苦しむ木浪が立ち返ったのは、まさに原点だった。「社会人のときに毎日やっていて」。試合にフル出場し、ウエートトレ…そしてまたバットを握り締めた。グラウンドで一人、打ち続けたロングティー。足元を見つめる時間。その足は簡単には寮へと向かなかった。
「ポイントをつかめるんですよね。昔の感覚を取り戻すというか。練習したら自信になるし、人よりやらないといけないから」
原点回帰となった11日間。思い返すのは、矢野監督の言葉だった。「監督の求める…それ以上ができるようにしたい」。鳴尾浜で立てた誓い。努力は決して裏切らない。木浪が流した大粒の汗が、それを証明した。